参入障壁と知的財産権

参入障壁

参入障壁とは、その業界・分野に参入する際の困難性を示すものです。参入障壁が高い業界は、新規参入が難しいためある程度企業シェアが固定化します。参入障壁が低い業界は、多くの企業が参入することで競争が激化し価格競争に陥りがちです。

参入障壁を形成するものとして、以下の4つがあります。

  • 資金
  • ブランド
  • 技術
  • 法的規制
  • 特許

資金

多くの投資が必要となるビジネスは、参入障壁が高く新規参入が困難です。例えば、半導体等の技術分野は工場設立だけでも数千億の費用がかかるため、容易に参入はできません。韓国のSAMSUNGが30兆円規模の投資を表明するなど、潤沢な資金を持つ大企業のみが生き残っている状況です。ただし、半導体では大量の資金を投入しているため撤退が困難となり、業界内の競争は激化しています。

身近な例だと、飲食店で店舗を構えて営業するには1千万以上の資金が必要となりますが、ITを利用したコンサルティングだとシェアオフィス等でも開業できます。

ブランド

強いブランド力を有している業界は、参入障壁が高くなります。これは、既にブランドが確立されており、新たに自社ブランドを立ち上げて参入しても、既存ブランドの競合となるまでブランド力を育成するには長い時間と多くの費用がかかるためです。

例えば、腕時計では、カシオ、セイコー、シチズン等があり、高級腕時計では外国のロレックス、オメガなど非常にブランド力の高い業界です。

新規に参入するためには、自社のブランド力を高めるか、価格帯や機能・性能の異なる領域に参入することが考えられます。ブランドを育てるには非常に時間がかかるため、あらかじめ知られたブランドを他分野に移行することも有効です。

技術

高い技術力が必要となる技術分野は、新規参入が困難です。例えば、自動車は「すり合わせ」に代表されるような高い技術の積み重ねによって完成しており、新規参入は非常にハードルが高いです。

法的規制

法律で規制されていることにより、新規参入のハードルが高い業界があります。例えば、弁護士や我々弁理士等の士業も法的規制によって参入障壁が形成されている業界です。合格率の低い試験を突破した人でなければ資格を得られないため、他の業界から比べると競争が激しいとは言えません。

また、政府の許認可が必要だがなかなか得ることが難しいテレビ放送、携帯電話等の通信事業なども法的規制によって新規参入が難しくなっています。

特許

特許等の知的財産権により、参入障壁を形成することができます。パテントプールという考え方では、複数の企業間である事業を行うために必要となる特許を互いに融通して使用できる状態とし、新規参入事業者にはライセンスしません。これにより、新規参入事業者は特許のライセンスを受けることができないため、事業を行えず新規参入を断念せざるを得ません。

この事業者が新規参入するためには、自らもパテントプールとなりえる必須特許を取得し、既存の事業者に対してライセンスを行うことです。そのためには、研究開発に多額の投資を行い、新たな技術を開発する必要があります。

中小企業の参入障壁と差別化

中小企業では、限られた資金で事業を運営しなければならないため、参入障壁の形成には、技術力又は知財でカバーするしかありません。ここで、高い技術力を有している製造業やITベンチャーであれば、その技術を源泉とすることができます。しかし、参入障壁を形成できる程の技術を有する企業は限られています。

そこで、市場で参入障壁の形成が難しい場合には、競合との差別化により市場シェア拡大を目指します。模倣され難い高い技術、ブランド力、知財等が差別化の要因となり得ます。

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