5フォースと特許
5フォース
企業の外部環境を分析する方法として、ポーターが提唱したのが5フォースという考え方です。企業に影響を与える要因は、競合他社だけではなく他の4つの要因も大きく関わっています。この考え方は、企業の戦略策定や競争戦略の策定に利用することができます。
競合他社との敵対
業界内における競合他社との直接的な敵対関係です。競争が激しくなる要因としては、競合他社が多い場合や業界の成長率が低くて飽和状態である場合が挙げられます。逆に、自社が市場を独占している場合やニッチな市場で競合の数が少ない場合等は影響が少なくなります。
特許
競合との競争が無い業界は皆無であるため、自社の製品の差別化を図るなどの対策が必要となります。このときに、特許権が有効です。特許権を取得しておくことで競合他社が特許回避のための技術開発が必要となるため、製品投入のタイミングが遅延します。その間に、自社が市場シェアを拡大することができます。
特許出願は、早期審査を行うことによって最短で3か月程度で権利化を図ることができます。早期に権利を確定させたい場合等には、有効な手続きとなります。
代替品の脅威
既存の製品の代替品が出現することにより、需要者のニーズを満たしてしまいます。例えば、音楽を聴く媒体であるカセットテープやレコードはCDの出現によって衰退し、現在CDはオンライン配信サービスに代替されつつあります。
代替品の出現によって業界構造が大きく変化し、既存製品の市場が段階的に縮小します。その中で生き残っていくためには、さらなる価格や製品での差別化が必要となります。
売り手の交渉力
売り手の交渉力とは、部品や材料を仕入れている業者の交渉力が高い場合です。これは、売り手の業者が独自製品で差別化を図っていて、競合が少ない場合には高い交渉力を持ちます。また、市場が寡占状態であって少数企業が支配している場合も同様です。
売り手の交渉力が強くなってくると、仕入れ価格が上昇して利益を圧迫します。一般的に販売価格への転嫁は困難であるため、対応が必要となります。
買い手の交渉力
買い手の交渉力とは、製品を購入する顧客の力が強い場合です。自社の製品が十分に他社製品と差別化できていないと、顧客からの値下げに応じざるを得ず利益の減少要因となります。BtoBの場合には、相手方の購買力が強い場合、例えば非常に多くの製品を仕入れる家電量販店は購買力が強いため、メーカーの力が弱くなります。
新規参入の脅威
新規参入がしやすいか否かは、業界によって大きく異なります。例えば、半導体業界では新規参入のためには膨大な設備投資が必要となるため、参入障壁が高くなります。また、医者や士業など、国の法律によって誰もが参入できない状況である業界も同様です。
特許
新規参入が増えることで価格競争となり、利益が減少します。参入障壁を形成するためには特許権が有効な選択肢となります。業界によってはパテントプールによって特定の企業同士で特許を持ち合い、新規参入を防ぐということもあります。
特に、近年のITやIoT技術の進歩により、その業界に参入するためには必ず必要となる特許(必須特許)が無いと、そもそも参入できないということもあります。仮に参入したとしても、必須特許を持っている企業から差し止め等の措置を受け、撤退せざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。
特許には新規参入者の参入障壁を高めるという効果もあるため、新たな技術が生まれたときは特許取得の検討をお勧めします。