初心者のための米国出願解説
出願方法
パリルート
日本に出願してから1年以内に、日本と同じ内容の特許を米国に出願することができます。パリ条約に基づく優先権と呼ばれ、日本の出願日と同じ日に米国に出願したとみなされます。
米国に出願する際は、日本に出願した日本語の明細書を英訳しなければなりません。翻訳にはおおよそ1~2か月を要するため、米国での特許取得を希望する場合は早めに手続を進めましょう。
国際特許出願
国際出願は、出願から審査までの手続を国際調査機関が行い、その審査結果を持って米国に移行するという制度です。国際特許出願なので、米国以外の国にも移行することができます。国際特許とは、出願から審査までの手続きを一括して行う制度であり、俗に言う「世界中で有効な国際特許」ではありません。
日本語での出願も可能であり、国際出願した後30カ月以内にどの国に移行するかを決めます。このとき既に審査結果が発行されているため、結果次第でどの国で特許を取得するかを決めることができます。米国に移行する際は、英語の翻訳文を提出する必要があります。
直接出願
米国への出願方法として、英語で出願書類を作成して直接米国に出願することができます。ただし、出願時から英文を容易する必要があり、あまり使われない方法です。もし、米国でしか製品を製造販売しないという場合には良いでしょう。
米国特許出願の手続
出願から特許まで
日本の出願と同じように、出願後に審査が行われ、特許にできないと判断された場合には、拒絶理由通知(Office Action)が発行されます。出願人が拒絶理由通知に対して補正してもまだ特許にできないとされた場合は、最後の拒絶理由通知(Final Office Action)が発行されます。
これらの応答期限は発行されてから3か月ですが、最大6カ月まで延長可能です。ただし、延長期間が長くなればなるほど費用が高くなり、6か月後の応答の場合には15万円以上の費用がかかります。
米国出願では、日本の事務所費用に加えて米国の事務所費用がかかるため、権利化までの金額も高額になります。中小企業には特許庁費用の減免制度(small entity, micro entity)があるため、該当する場合には積極的に活用しましょう。
米国の出願時には、発明者の署名がされた宣誓書が必要になります。現地代理人によっては、委任状も必要となります。審査の結果、特許として登録されると、権利期間は米国の出願日から20年となります。国際特許出願の場合には、国際出願日から20年です。
IDS
米国では、出願人が知っている特許に関する情報を米国特許庁に提出しなければなりません。出願人が提出義務を負う情報は、同じ特許を出願した国で発行された拒絶理由通知です。義務を負う期間は、出願してから特許になるまでです。
もし、出願人が知っていたにも関わらずIDSとして日本の拒絶理由通知を提出しなかった場合には、特許の権利行使ができなくなる可能性があります。
RCE
審査の過程で、最後の拒絶理由通知が発行された後、RCE(Request for Continued Examination)を請求することで、大幅な補正をすることが可能です。
最後の拒絶理由通知の際の補正は制約が多かったのですが、RCEをすることで、最初の状態に戻すことができます。つまり、最後の拒絶理由通知→RCE→拒絶理由通知→最後の拒絶理由通知となります。各拒絶理由通知への応答で特許性が認められれば、特許として登録されます。
RCEは、1回で10万以上の費用がかかり、回数を重ねるにつれて費用が上昇します。さらに、拒絶理由通知の発行される回数が増えるほど、日本事務所及び外国事務所に支払う料金が増加します。
費用
拒絶理由の応答回数や明細書の長さによってまちまちなので一概には言えませんが、1件の欧州出願を特許にするまでに、100万以上はかかるでしょう。中小企業のアンケート結果によると、1か国あたりの支払額の平均は、欧米が119万円でアジアが76万円となっています。