デザイナーのための意匠登録の知識

意匠の出願

創作者

デザイナー・クリエイターが製品の外観デザインを創作した場合、そのデザイナーが意匠の創作者となります。従って、デザイナーが法律上の意匠登録を受ける権利(「意匠を出願できます」という権利のこと)を有することとなります。複数の人と協議してデザインを創作した場合には、意匠登録を受ける権利は複数人の共有となります。

つまり、製品デザインしたデザイナーのみが意匠を出願することができます。第三者からの発注によって外観デザインを行った場合は、発注者が意匠登録するときはデザイナーから意匠登録を受ける権利を譲り受ける必要があります。

意匠登録出願の願書には、創作者としてデザイナーの氏名・住所が記載され登録時に公表されます。自宅の住所を公表したくない場合には、会社の住所を記載します。

発注者との契約

デザインを受注する場合は契約を締結することが多いですが、相手が意匠登録出願を希望する場合は、その旨も合意し意匠登録を受ける権利を発注者に譲渡することを明記しましょう。譲渡は、有償でも無償でもよく、デザイン料に含めても別に加算しても、互いに合意できれば問題ありません。

デザイナーも意匠権を保有したい場合は、持分の一部を譲渡して共同で意匠登録を受けることも可能です。出願等の費用負担は持分に応じて負担することが一般的ですが、双方で協議して自由に決めることができます。

発注者が勝手に意匠出願したら
デザインの発注者がデザイナーから意匠登録を受ける権利を譲り受けることなく意匠登録出願を行った場合は、デザイナー側は意匠権の移転を求めることができます(意匠法第26条の2第1項)。

また、意匠権は無効であるとする無効審判を請求して意匠登録を遡及的に取り消すことができます(意匠法第48条第1項3号)。

共同で創作したデザインを一方の人が勝手に第三者に譲渡し、この第三者が単独で意匠登録を受けた場合であっても、他方のデザイナーは意匠権の移転・無効を請求することができます(意匠法第26条の2第1項、意匠法第48条第1項1号)。

意匠権

著作権との関係

もし、意匠権が他人の著作権と抵触している場合、つまり他人のデザインを一部または全部にそのまま使用した場合は、模倣した部分についての意匠権は使用することができません(意匠法第26条第2項)。全部を模倣した場合には、上述のような意匠登録を受ける権利が無いと判断されて、移転・無効となるかもしれません。

レアケースですが、デザインの一部に他人の著作物を用いる場合には、必ず著作権者の許諾を得ることが必要となります。

権利の譲渡・ライセンス

意匠権は財産権なので、第三者への有償又は無償の譲渡、又はライセンス契約を行うことができます。発注者が意匠権を有している場合には、創作者であるデザイナーは何の権利も有していないため譲渡等の手続を行うことはできません。

発注者とデザイナーとで共同で意匠権を保有している場合は、相手の同意を得て譲渡やライセンスを行うことができます。一方が権利を放棄した場合には、他方の持分100%となります。