戦略的提携と特許

戦略的提携とは

アライアンス(Alliance)とも呼ばれますが、複数の企業が相互に連携して事業を行うことです。市場の変化速度が非常に早くなっている現代では、企業が単独で事業を行うことが難しくなってきており、複数の企業がそれぞれの得意分野を生かしつつ連携する戦略的提携が活発となっています。

戦略的連携を行うことで、外部企業の技術力や販売力等を活用することができるとともに、自社事業とのシナジー効果が期待されます。また、自社でゼロから開発を行う場合と比べて、低コストで事業化できることもメリットです。

提携では、互いに情報のやりとりが生じるため、自社の独自技術やノウハウ等が外部に流出するリスクが生じます。このような事態を予防するためには、自社内における情報管理を徹底することが挙げられます。

戦略的提携には、以下のような形態があります。

資本業務提携

互いに株式等の資本を持ち合ったうえで、事業上の提携を図ります。相互の関係性がより密となるため、関係解消が円滑に進まないという事態も生じます。

資本は別だが業務のみ提携する業務提携、資本のみ出資する資本提携もあります。他企業の経営への影響を最小限に抑えたいが他社の技術を活用したい場合には、業務提携が選択されます。逆に、技術力のある企業が早急に資金を調達したい場合には、資本提携が選択されます。

合弁会社の設立

新たに会社を設立し、その会社に各企業が人員を送り込み、目的に沿った事業活動を行います。事業がうまくいかなかった場合には、合弁会社を畳んで終了します。

企業から送り込まれた人員は会社を経営する立場であるため、将来が期待できる人材を送り込み経営体験をさせることもできます。社内起業の場合には他の部署との競争や予算取り等ですが、合弁会社の経営となると競合がいる市場で事業を行うことにより収益を得るという経験を積むことができます。

共同研究

他の企業の得意分野を活用して自社の事業に活かしたい、あるいは双方の技術を持ち寄って新たなものを生み出したい場合には、共同研究が行われます。共同研究は、企業同士と、企業と大学のケースがあります。企業同士の共同研究では発生する費用は自己負担で金銭的なやりとりが無い場合がありますが、大学との共同研究では大学側に研究費を支払って共同で研究を行います。

成果物について特許出願をすることがありますが、権利帰属や費用負担等の取扱いは共同研究契約で予め定めます。共有特許の場合には、平等であり双方の納得感が得やすいですが権利のハンドリングが悪くなります。例えば、第三者への使用許諾を行う場合、又は権利を第三者に譲渡する場合には、共有の権利者の許諾が必要です。

クロスライセンス

クロスライセンスとは、所有している特許権を互いにライセンスし合うことです。一般的に、第三者の所有している特許権を使用する場合にはライセンス料を支払いますが、クロスライセンスでは双方が特許権を融通し合うため、金銭的なやりとりは発生しないことが多いです。

事業を行うために必ず必要となる必須特許を持っている企業が複数存在しているとき、その企業同士が互いに必須特許をパテントプールとして許諾し合い、新規参入者を排除するという知財戦略が執られることがあります。このとき、必須特許を所有していない企業は、その事業に参入することができなくなります。