大学移動

【質問】
大学の先生が移動で別の大学に移ったのですが、特許はどうなるのですか?

 

出願人が大学単独の場合

発明者の先生が移動になったとしても、出願人は大学であり特許権者も大学であるため、その権利をどのように扱うかについては大学に権限があります。発明者の先生は、出願の際に大学に譲渡証書を提出して「特許を受ける権利」を大学に譲渡しているはずです。

従って、発明者の先生はその特許権について権利を有していません。もちろん、特許の発明者として名前が残る名誉権は享受していますが、それ以上の権利はありません。その特許を企業にライセンスしたり、譲渡する権利は大学が有しています。

法律上は上記の対応となりますが、大学の場合には企業と異なり発明に対して思い入れのある先生が多くいます。そのような先生から大学が発明を取り上げた形にならないように配慮すべきでしょう。

大学と企業の共同出願の場合

先生が大学に権利を譲渡している点では、上と同じです。従って、先生は発明者の名誉権を有しているのみとなります。しかし、企業との共同出願となると、おそらく企業と共同出願契約を締結しているため、勝手にライセンスや持分の譲渡等はできません。

特許法上も、共同出願の場合に他社に実施権を許諾する場合や持分を譲渡する場合には、共同出願の企業の同意が必要になる旨が記載されています。

(共有に係る特許権)
第七十三条
特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができない。
2  特許権が共有に係るときは、各共有者は、契約で別段の定をした場合を除き、他の共有者の同意を得ないでその特許発明の実施をすることができる。
3  特許権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その特許権について専用実施権を設定し、又は他人に通常実施権を許諾することができない。

ただし、先生が別の大学に移り、大学が特許を放棄して企業の単独の持ち物となった場合であっても、先生はその特許をもとにした研究を続けることができます。特許法上も、試験や研究については特許の効力が及ばないと明記されています。

(特許権の効力が及ばない範囲)
第六十九条  特許権の効力は、試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばない。

先生個人の出願の場合

先生個人の名義であるため、特許は先生が自由にライセンス等することができます。ただし、出願人の住所が大学内部になっている場合には、新しい大学の住所に変更する必要があるため、登録名義人の表示変更の申請をします。

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