願書への発明者を誤記載について
発明者とは
発明者は、特許を出願する権利である「特許を受ける権利」を有します(特許法第29条第1項)。しかし、どのような人が発明者に該当するかについては、特許法に定義がありません。従って、学説や判例から発明者をどのように認定するかを判断します。
一般的には、以下のような人は発明者に該当しないと解されています。
- 単に一般的な助言・指導を与えた者(単なる管理者)
- 単にデータをまとめた者又は実験を行った者(単なる補助者)
- 発明者に資金を提供したり、設備利用の便宜を与えることにより、発明の完成を援助した者又は委託した者(単なる後援者・委託者)
つまり、発明者たりえるには、発明の創作活動に実質的に寄与する必要があります。
【関連リンク】日本における発明者の決定(特許庁)
発明者でない者を願書に記載した場合
発明者でない者を願書に記載してしまった場合には、出願が却下されてしまう可能性があります(特許法第36条第1項2号、第17条第3項2号、第18条第1項)。しかし、特許庁ではその人が真の発明者であるか否かは判断できないため、原則として発明者が正しく記載されているとして取扱っており、実際に問題となることはありません。
万が一、第三者から発明者でない者が発明者として願書に記載されていることについて特許庁に何らかの通知が入ったとしても、願書を補正することにより問題は解消します。ただ、このようなケースは極めてレアケースだと思います。
発明者を願書に記載しなかった場合
この場合は、問題が非常に大きくなってしまいます。発明者に無断で特許を出願した場合には、いわゆる冒認出願とされてその特許出願は拒絶されるとともに(特許法第49条7号)、もし登録になったとしても無効になってしまいます(特許法第123条第1項6号)。
また、無効にならないまでも、発明者は特許権者に対して特許権の持分の移転を求めることができます(特許法第74条第1項)。
複数人で発明を行い自分だけ発明者の名前から外されていた場合についても、上記と同様です。複数人で発明した場合には、必ず全員で出願しなければなりません(特許法第38条)。1人だけ発明者を外して出願を行った場合には、共同出願違反となり、その特許出願は拒絶されるとともに(特許法第49条2号)、登録されたとしても特許が無効となってしまいます(特許法第123条第1項2号)。
実際には、自分が発明したにもかかわらず無断で第三者が特許出願を行ったとして、真の発明者が自身も特許権を有していると主張することによる争いが大半です。話し合いで両者が合意できない場合には、裁判となるケースもあります。