特許を担保にしたベンチャー企業への出資・融資

融資の問題点

特許権は法律上の財産権であるため、特許権を担保として出資を募ることができます。特に、近年のIT系ベンチャーでは担保となる設備等がないため、特許等の知的財産権による担保が有望視されています。

担保権は譲渡担保として設定されることがあり、融資金を返済できなかった場合には特許権を譲渡するという契約になっている場合があります。

特許権は、その発明を使える人が所有している分にはとても価値のあるものですが、使えない人が所有していても何らの価値も生み出しません。むしろ、特許権が存在していることにより他の企業の実施が制限される等のマイナスの側面があります。

また、特許権そのものの価値の評価が難しく、安易に換金できるものではありません。また、ライセンス許諾を行い利益を得ることもできますが、その特許権を使用したいという企業を探すことも労力がかかります。

つまり、以下の理由によって、特許権を担保とした融資は難しいという側面があります。

  1. 特許権の現金化が困難
  2. 譲渡担保が設定されることが多い
  3. 特許を保有しているだけでは収入が得られない

返金されないケース

まれに、特許権を担保として会社に資金提供したが、所定期間が経過しても返金されないというケースがあります。契約内容によりますが、特許権を譲渡担保として設定している場合には、会社と協議して特許権の移転登録を行う必要があります。その際は、会社の実印を押印した譲渡証書が必要となります。

会社との交渉が決裂した場合は、裁判等により判決を得て特許権を譲り受けることが考えられます。その際は、担保となる特許権の価値を評価し、評価額に基づく供託金を裁判所に供託することがあります。

まとめ

個人・法人が特許権を担保としてベンチャー企業に融資する場合には、特許権のみを担保にするだけでなく換価処分が可能な有形資産についても合わせて担保とすることが望ましいでしょう。

金融機関における中小企業への融資についても、豊富な有形固定資産を有している企業への融資が多いというも、このような理由によるものです。