起業に必要な商標の知識
名称と事業分野
商標登録は、「登録したい名称」と「事業分野」の両方を特定して登録します。名称は、文字だけであったり、ロゴやシンボルマークとセットで画像として登録することもできます。
文字?文字+ロゴ?
起業する際に、会社の名称を決めましょう。例えば、「株式会社いろは」で起業を考えている場合は、「いろは」で商標を取得しましょう。会社名がロゴなどの画像を含んでいる場合でも、「いろは」で登録することができます。ベストなのは、両方登録することです。
フォントや文字サイズ、文字の配置(下付きや上付き文字)、文字色など、デザイン性がある文字列についても商標登録可能です。また、英語表記にするか、日本語表記にするかについても検討しましょう。
商標登録する上で大切なことは、「自分が使用する形で商標登録すること」です。商標では、法律上自分で使用しなければなりません。もし、長年使用していなかった場合には、他人からの請求によって取り消される可能性があります。
現在の事業と将来性
商標を登録する際は、現在どのような事業を行っているかについても併せて登録します。指定商品・指定役務(サービスのこと)といいます。指定商品・指定役務は、現在行っている業務及び将来的に行う可能性のある業務について指定します。
商標登録の権利範囲は、文字の同一又は類似する範囲、且つ指定商品・指定役務が同一又は類似する範囲まで及びます。指定商品・指定役務は、1~45類までに区分されています。この区分の数が増えるほど、特許庁に支払う手数料が増えます。
1つの区分であっても、その区分の中で多数の商品・役務を指定する場合には、使用している又は使用する意志がある旨の書面を提出しなければなりません。それぞれの商品・役務は類似群コードと呼ばれるコードでさらに分類されています。
この類似群コードが1つの区分で8つ以上存在している場合には、特許庁から使用の意思確認のための通知が届きます。これに応答する際、上記の書類が必要になります。
商標登録可能か?
既に商標登録されている名称と類似し、かつ事業分野が同一の場合には、商標登録を受けることができません。商標登録されないことも考慮し、名称の変更も考えておきましょう。
会社名が事業分野における普通名称であった場合には、登録されない可能性があります。例えば、事業分野が介護であって、会社名が「介護サービス株式会社」である場合は他社との識別力が無いとして登録されません。
商標登録しておかなかった場合のリスク
名称の使用禁止
その会社名を使用できなくなります。つまり、いままで築き上げてきた会社名というブランドを破棄しなければなりません。新たな社名で再出発ということになると、その名前を知ってもらうために広く宣伝活動などをしなければならず、多くの時間・経費を浪費します。
社名変更に伴い、カタログ・包装紙・看板など、会社名が印刷されているすべての物品を一新しなければならず、ひいてはドメインなどホームページの更新も必要になります。
会社名を商号として登記することができますが、商号と商標は全く別であるため、「この会社名は商号として登録されている」という反論はできません。
損害賠償
商標権者からは、上記の差止請求だけでなく、損害賠償を請求される可能性もあります。また、刑事罰も定められていて、500万円以下の罰金又は5年以下の懲役に科せられます。
このようなリスクを回避するためには、会社の起業時に考案した会社名が商標登録できるかを調査し、可能な場合には商標登録を行います。登録されると、安心してその会社名を使用することができます。商標とは、「名前に付ける保険」であるとお考えください。