知的財産権(特許・実案・意匠・商標)の取得理由

出典:中小企業の知的財産活動における基本調査(特許庁)

模倣品の排除

上記グラフは、特許庁が中小企業に対して行ったアンケートの結果です。各グラフの色の違いは、以下の通りです。色が小さくて分かり難いですが、上から特許、実用新案、意匠、商標の並びとなります。

知的財産権を取得する理由で最も多いのは「模倣品や類似品を排除する」であり、50%以上の企業がこれを目的としています。新製品や新商品を開発、販売するときは競合の模倣を抑止し、自社の売り上げを拡大したいという意向があります。そのときに、知的財産権を取得しておくと競合は侵害品を製造することができないため、模倣品が市場に出回りません。仮に、市場に出回った場合には、権利を行使することで排除できます。

特に、意匠権は回答者のうち58.%の企業が模倣品抑止を目的として権利取得を行っています。意匠権は特許や実用新案ではカバーできない物の形の権利であるため、デッドコピーや類似品の防止に有効です。特に、近年は大手ECサイト(amazonや楽天等)での知的財産権侵害品の取扱いが厳しくなっているため、ネット販売事業を行っている企業の関心が高まっています。

商標権についても意匠権に次ぐ高さとなっており、回答者の52.5%が模倣品防止を目的としています。商標権の場合は、ブランド名を模倣されると品質誤認によるブランド価値の低下といった問題が起こります。一度、顧客に「この商品(ブランド)は質が悪い」と思われると、信用を回復するのは多大な労力がかかります。従って、市場に同じ名称で粗悪品が出回らないように、商標権は有効な手段といえます。

他社の参入を防ぎ、市場を確保する

特許権を取得した理由の1位は「他社の参入を防ぎ、市場を確保する」で、回答企業の54.4%がこれを選んでいます。特許権を取得すると、競合が類似品を製造・販売しようとすると、特許権を回避するように設計しなければなりません。そうすると、開発期間がさらにかかるため、市場への参入が遅れます。また、特許権を回避できない場合には、市場への参入を断念します。

そうすることで、競合他社の市場への侵入を防ぎ自社の市場を確保することができます。中小企業の競合は中小であることが多く、知的財産権に関する専門部署を有するところは多くありません。

そうすると、特許分析や調査、侵害可否の判断については十分に検討できているとは言えないケースもあります。製品を作ったけど侵害品なので売れない、となると多くの損失を抱えることとなるため、リスク回避の点からも他社特許の動向については、注視する必要があります。

技術や商品などのブランド価値を高める

商標権を取得する理由の第2位は「技術や商品などのブランド価値を高める」です。商標権は、自社のブランドを保護する目的で取得する企業が多く、他社にブランドを模倣されることを防止してブランド価値を高めています。

商標権は商品名、ブランド名の権利ですが、実際に保護しているのは商品に化体した信用です。つまり、他社が同じ名前で粗悪品を販売して信用を下げる行為を防止するために、商標権は存在します。

特許権についても、「特許取得済」とパッケージに記載することで、特許を取得できるくらい高い技術力を有していることを示せます。これにより、商品ブランドの価値も向上します。

知名度向上など対外的にアピールする

特許権や商標権を取得することで、技術力やブランド力をアピールして他社と差別化することが考えられます。また、特許権を取得することができる技術を有している企業と認知してもらい、企業ブランドを高めることも可能です。

ただし、これらの効果はあくまで副次的なものであり、企業が特許権、意匠権、商標権を取得する目的は、模倣品排除や市場確保といった自社売上に直結するものが主となっています。

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