職務発明規定の必要性~中小企業の従業員による発明~
特許法上の職務発明
職務発明とは
職務発明とは、会社の従業員等(社長や役員も含む)が職務中に行った発明のことをいいます。会社は、予め規定で定めることにより、従業員等が行った発明(特許を受ける権利)を譲り受けることができます。
現在、職務発明を直接会社に帰属させることができるように法改正する議論がなされており、将来的には規定で定めることにより、職務発明を直接会社に帰属できるようになります。
会社の発明を実施できる権利
特に会社で職務発明に関する規定がなければ、発明は発明者である従業員のものとなります。ただし、従業員が職務中に行った発明である場合には、会社は発明を実施する権利(通常実施権)を有します。
相当の対価の支払い
従業員は、会社の職務発明規定によって発明を会社に譲渡した場合、相当の対価を受け取ることができます。対価の算定は、以下の項目を考慮して算定されます。
- 対価を決定するための基準の策定に際して使用者と従業員の間で行われる協議の状況
- 策定された基準の開示の状況
- 対価の額の算定について行われる従業員等からの意見の聴取の状況
中小企業の職務発明に対する取り組み
中小企業の状況
中小企業のうち、特許出願を行ったことがある会社は約7割に上りますが、職務発明規定を設けている会社は約2割にとどまっています。
会社と従業員との間で、発明の対価に関する訴訟がなされることも懸念されます。有名な青色発光ダイオードの発明の対価請求では、東京地裁は発明の対価は604億円と算定し、会社に対して発明者に200億円支払うよう命じました。このようなトラブルを防止するためにも、職務発明の規定は各企業において設定すべきです。
職務発明規定の必要性
上述したように、法律上従業員が職務中に行った発明は原則従業員に帰属します。会社がその発明を譲り受けるためには、予め職務発明規定を定めておく必要があります。従業員と会社の間の紛争を防止するためにも、職務発明規定は定めておくべきです。
職務発明規定がある場合には、会社は職務発明規定により発明を譲り受け、会社が出願人として特許を出願します。職務発明規定を定めることにより、従業員の発明への意欲が高まり新たな技術が生まれるというメリットがあります。