海外で有名な商標の出願・登録について
登録できるのか?
登録できる可能性は、低いと考えます。ただし、ゼロではありません。これは、どの国で知られているか、どの程度有名か、日本でその商標は知られているか、不正の目的の有無、等によって審査の状況が変わるためです。
「海外の商標が日本で登録されていないから、先に登録しておいて日本に進出してきたときに高く売りつけよう」という考え方がありますが、このようなビジネスは倫理上望ましくありません。
海外で広く知られている商標だが日本で未だ登録されていない、という理由で海外の会社と関係性の無い第三者が日本で出願しようとするケースがあります。拒絶される可能性もあり、また倫理上も好ましくないことから、このような商標登録出願は行うべきではないと考えます。
なお、仮に登録されたとしても、海外の会社から登録無効であるとして、無効審判が請求される可能性もあります。この無効審判に対抗するためには、50万以上の費用がかかります。
拒絶される理由
商標法では、「外国で広く知られている商標と同一・類似であって、不正の目的で使用する場合は登録できない」とする規定があります(商標法第4条第1項19号)。特許庁では、ドイツ、イタリア、フランス、中国、韓国で広く知られている商標に関する情報が当該国から提供されており、これらに該当する場合は、「外国で広く知られている商標」として取り扱われます。
出願人が高く売りつけよう等の不正の目的があるか否かは書面の審査では分からないため、外国で広く知られている商標と極めて類似し、造語・顕著な特徴からなる場合、は不正の目的があると判断されます。日本で既に広く知られていて造語からなる場合は、例外として不正の目的に該当しません。
登録された場合であっても・・・
海外の商標を使用している会社からすれば、膨大な宣伝広告費用をかけて築き上げてきたブランドを日本で使用できないことは大きなダメージとなります。従って、第三者が日本で登録した商標を異議申し立てや無効審判等で登録を取り消す手続きを行うものと思われます。
実際に、DonaBenta事件(知財高裁H19.5.22、H18(行ケ)10301)やS DESIGN事件(知財高裁H22.3.30 H21(行ケ)10220)では、海外で広く知られた商標と同一又は類似であるとして登録が取り消されています。
偶然同じだった場合
自分の考え出したブランド名が、たまたま海外の有名ブランドと同じ名称であって日本で登録されていなかったとしても、審査では拒絶される可能性があります。
これは、出願人のブランド名の日本における有名度、造語であるか否か、海外におけるそのブランドの有名度等によって判断結果が変わってきます。なお、海外の有名ブランドが日本で広く知られている場合は、原則として登録できません(商標法第4条第1項15号)。